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タモリさんがかつて深夜番組「ヨルタモリ」で「『お疲れ様』というのは、元来、目上の者が目下の者にいう言葉。これをわかっていないんですね」という発言をしたことが波紋を広げていました。「ヨルタモリ」や「タモリ倶楽部」でのタモリさんの発言は深いです。何故そんな発言ができるかと癒えば。これは彼がただのお笑いタレントではないからです。歴史と伝統のある古城の趣を私はタモリさんに感じます。
目次
プロフィールやタモリさんの背景のついてはこちら。
中々素晴らしい本だと思います。クリックするとAmazonに飛びますので内容はそちらでどうぞ。
稀代の教養タレント タモリ
彼は当代一流の教養人たちにその才能を見出され、その後芸能界にデビューしました。
自分から売り込んだわけでもなく。みんなが面白いと言うから芸能界入りしたという。
その面白いという人たちは当代の文化人が数多くいました。山下洋輔さんとか筒井康隆さんとか。
特に漫画家の赤塚不二夫さんはタモリさんにとって恩人とも言うべき人になりました。
その感謝の思いがあったのか赤塚不二夫さんの葬儀における弔辞は素晴らしいものでした。
しかしその弔辞ですが、なんと読み上げたものは白紙だったとのこと。
誠実で素晴らしい内容で8分にも及ぶ素晴らしいものでした。
それがまさかのぶっつけ本番のアドリブだったとは。まるで弁慶の勧進帳のようだったと話題になりました。
しかしこれなどを聴くと今のタモリさんが赤塚不二夫さんの恩恵をどれほど受けたのか。
当時のいろんなことがわかって感動的です。
タモリさんは音楽をはじめとして様々な分野への造詣が深くて、それを背景とした「素人芸」を次々に作り出していったわけですので、だからこそ山下洋輔さんなどをはじめとする音楽家でさえ舌を巻くようなレベルの芸が仕上がっていったわけです。
4カ国語マージャン、デタラメ外国語、イグアナやコンドルの着地の形態模写…。そんな“素人芸”で、大人をうならせることができる存在は他に見当たりません。
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毒を持って生まれたタモリさん
ただ最初は非常に毒がありまして、初期の頃のアイパッチ姿は、当時の子どもだった私にはものすごく刺激的でした。
音楽アルバムにも毒が盛り込まれていましたね。
ジス・イズ・ミスター・トニー谷
髪もいつもポマードでべったりと固め、テラテラとしていて、トニー谷さんのような意地の悪さが漂っていました。
脱線しますが、このトニー谷さんのCDは傑作です。私的には。aいわゆる「黒い」タモリさんですね。
でも私はそこが好きでした。タモリさんに限らずあの頃は毒を発散してブラックユーモアをネタにしていたお笑いタレントがたくさんいました。
そしてわたしは『今夜は最高!』(日本テレビ系)で大人向けのネタなどをやってたタモリさんのファンでもあります。
志村けんさんなどの、からっとした笑いとは違っていましたね。明るく、わかりやすく、カラッとしたお笑いとは真逆のもっと深いところから出てくる言葉たち。
しかもこれが深い教養の中から出てくる言葉なんで、シニカルでも救いがありました。ただもちろん彼の笑いが万人向けのものではなかったです。
その精神は「おそ松さん」にも受け継がれていますね。タモリと赤塚不二夫がともに持っていた毒を。
どっちも「今夜は最高」だって^^;
毒を消してさらに飛躍するタモリさん
ところがサングラスをかけて「笑っていいとも」という国民的番組の司会をやっていくうちにそんな毒を消して、無個性に見えるんですけれども、そしてゆるいんだけれども、
他に媚びず、安定感のある、信頼に足る存在として君臨してまとめていきました。
私は「笑っていいとも」はファンではなかったんですぐに観なくなりましたが、この番組を通じて懐が深くなったんだなあと思ったものです。
少し前。「今夜は最高」と同じようなコンセプトの「ヨルタモリ」が放送されたときには嬉しかったですね。でも一年で終了。
今度は「今夜は最高」を復活させようという動きが高まって、日本テレビが攻勢をかけていましたが。「今夜は最高」をめぐっては過去にタモリさんと日本テレビの確執がありましたから。当時にディレクターと大喧嘩して、もう日本テレビには出ないって宣言しましたから。だめになりました。
私としてみたらば「ヨルタモリ」が「今夜は最高」の後継番組です。だからいいんですけど。
しかしタモリさんが待望されるのは歓迎です。
「タモリさんの魅力はマニアもうならせる趣味の広さや、深い博識ぶりにあります。30年以上続いている『タモリ倶楽部』や、『ブラタモリ』を見ても分かるように、深夜向きのマニアックさが最大の持ち味です。そうしたバックボーンがあるから、いいともでもどんなゲストにも話を合わせられ、相手の魅力を引き出すことができた。これはタモリさんにしかできない芸当ですよ」(在京キー局関係者)
「朝の情報番組を担当している加藤浩次にしても設楽統にしても勉強熱心だし、器用に司会をこなしますが、オタクまでが一目置くほどの奥深さに欠ける。内村も有吉もそうでしょう」(芸能ライター)
タモリさんには現在のテレビやその他芸能が切り捨ててしまった教養が溢れています。
そして“ユルい”けれども“確固”としたライフスタイルがあります。
その価値に多くの方々が気づいてきたのではないのか。私はそんなふうに感じています。
関西の芸能人の本流?に位置する(奈良県出身なんですけどね)明石家さんま。浅草芸人を源流とする北野武。彼らは修行をし、基礎を身につけた上で現在の地位を獲得したんです。
それに比べるとタモリさんは全く異色の存在です。完全にオリジナルで、タモリ芸としか言い様がない芸風を確立しています。
タモリさんの芸について
北野武さんとは対極に位置するタモリさん。水と油のような関係だと思います。
たけしは彼の芸を自分には向かないし理解ができないと言って否定しています。
しかしそれでいて彼はタモリさんのことを非常に意識していると思います。
たけしがそこまでタモリさんを意識するからにはタモリさんが持っているオーラというものを十分に認識しているからだと思います。
タモリさんの場合、積極的に攻撃をするとか、相手のネガティブな心根に切り込むようなことはしません(てか実際にはかなりしていますが)。
そしてかなり知的な笑いを目指しています。高等遊民向けの完全に無意味な芸とでもいいますか。
そこにエリート臭を感じる人もいるのかもしれませんね。
最初のレコード
タモリ
画像をクリックするとアマゾンに飛んで曲を視聴できます。常にバカバカしい音楽を真剣にやっています。これぞ文化だと思わされるところがあります。
こういうものは昔は多くの芸人が持っていたものだと思うんですが、今はタモリさんのように独自の生き方をした人にしか残っていません。
またプロ根性でしのぎを削るたけしさんのように影響力を持とうとはしていません。でも今や影響力は絶大です。
私は両方共好きなんですが、その権力志向というところが決定的に違います。タモリさんは世界のたけしのようには映画監督にはなれないと思いますが、芸人としてならば。私はタモリさんのほうがずっと好きです。タモリさんはここんとこ起きた再ブームに関しても意に介していないと思います。
あまり世俗に対しての野心がないんですね。
ただ不思議なもので、たけしさんと同じくプロ意識を持っている萩本欽一さんが今はタモリさんのファンになっています。
「笑っていいとも」の番組でも語られていましたが、突然タモリさんが萩本欽一さんのスタッフルームを訪れたことがあるんだとか。
作家小林信彦と萩本欽一の対談本にも書かれていました。
小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム 名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏
かなりの部分「日本の喜劇人」「喜劇人に花束を」の内容と重複していますが、
定本 日本の喜劇人
(ちなみに「日本の喜劇人」は名著だと思います。)
しかしその対談本ではなぜかたけしさんがほぼスルーされていました。萩本欽一さんがお世話にもなった先輩コメディアンを列挙した時にはたけしさんの師匠の話なんかが出てきませんでしたね。今はたけしさんのことを評価していないんでしょうかね。
何故そんなことを思うかというと。
小林信彦さんは「日本の喜劇人」の中ではたけしさんをベタ褒めして、代わりにタモリさんのことは全く評価していませんでした。
作家の小林信彦は著書『日本の喜劇人』で、トニー谷などの系譜に位置する「下半身の弱い」芸人と批評。本来異端だったのに一般人気が高まった現象を、似非インテリ受けと切り捨てている。
今はタモリさんのことを評価しているようです。まあ評価は変わることはあるとは思いますが、トニー谷などの系譜に位置する「下半身の弱い」芸人!とか書いちゃって。小林信彦さんにはちょっとがっかりですね。見る目は大したことなかったんだなあって。彼の限界を見る思いです。
実際私の彼の本を読まなくなっちゃたし、以前ほどの影響力はなくなりました。
でもタモリさんを酷評していた時期は小林信彦さんの評価はとても強い影響力を持っていましたから。タモリさんは相当傷ついたようです。
1982年12月、タモリさんは日テレで「今夜は最高!」のホストをつとめていました。
そして「日本の喜劇人」で上述のように書かれた直後、同番組の冒頭で、
「オレは腰から下の線が弱いからダメなのかなぁ・・・」
と語ったりしていました。
タモリさんは抜き身の短刀を飲んでいるようなたけしさんのような怖さはないですから。
軽んじられたのかもしれませんが、今はそんな軽さの中の潜む強靭さが多くの人たちに理解されてきていると思います。
最終的には誰にでも好かれる芸人になっていきました。
「ヨルタモリ」は惜しまれながら終了してしまいましたが、深夜番組としては異例の高視聴率でした。大人の教養を笑いで包むあの芸風は今や彼以外に表現することができないものになっています。未だにシーラカンスのように続いている流浪の番組「タモリ倶楽部」。私はその真似をした「ブラタモリ」はあんまり面白くなくて。もう観ていませんが。既に70歳すぎですけれどもいつまでも元気で頑張っていただきたいと思います。
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